Not Equal
中田英寿
ガイドブックを片手に、見るポイントを決め、そこを訪れる――もし今回のベトナム行きが、彼の言うところの旅であるとすれば、人生はなんて味気ないものか。
スタンプラリーに「そこそこの満足感」しかないように、あらかじめ決まったコースを回るだけでは、心の奥底に灯るアツいものは何もない。それをわかりつつも、一週間という現実的な制約のもとでは、そうせざるを得ない、というのもまた事実である。
長く居ることだけが答えであるはずはないし、観光をすることを否定するわけでもない。地の食を喰らい、酒を愉しむことは、それはそれは楽しいことである。
しかし、そこにはある種の不確実性が存在するべきであって、そうであってこその旅であり、また人生である・・・――というのがどうやら私の嗜好であり、志向であるようだ。