転換期を迎えたタイの政治・経済


アジア経済研究所の夏期公開講座に出かけた。第一回目の今回は、「転換期を迎えたタイの政治・経済」というタイトルで、
・90年代以降の民主化
・タイという国の中進国化=国の近代化、現代化

をテーマに3人の講師が、それぞれの専門である、
・法律(97年憲法体制の意味と新憲法の動向)、
・行政(「タイ式」民主主義とタックシン政権)
・経済(GDP3000ドルの数値の裏の都市-地方格差・少子高齢化)
の立場から論じるというものだった。

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「人気絶頂」のタックシン政権崩壊の理由
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タックシン政権の崩壊の背後には、
a) 国王を含めて、王制を護持したい勢力からの反感があったこと
b) 旧来のタイ式民主主義の担い手、たとえば、軍関係者、枢密院、保守派知識人の一種の焦り
   ・農民を巻き込んだ大衆民主主義に対する都市中間層の嫌悪感・恐怖感
   ・近隣のマレーシアやシンガポールのように一党によって政治を牛耳られる
   ことへの抵抗感などがあったという分析であった。
   (97年憲法で、小選挙区制になってから農民の票が大きな力を持つよう
   になった。)

いずれもタックシンが非常に魅力的な政治家であったがために起こったことでもある。(わが国の首相はさぞうらやましいことだろう。)タイにおいて国王の威光というものは、非常に大きかったらしいが、「国王を敬愛するがタックシンも気遣う。」という言葉が出てくるほど、タイ農村部におけるタックシンの人気は絶大なものとなっていたらしい。

※タイにおけるクーデターは決して珍しいものでもない。ここ50年ほどの間に10回以上のクーデターが起こっているようだ。「クーデター」というと日本人の私にとってはおっかないことのように聞こえるが、感覚としては、「衆議院解散!」のようなものかもしれない。いや、さすがに違うか>_<

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●タイの地方部における高齢化の急速な展開
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タイにおいて高齢化の速度は非常に速く進んでいる。高齢化社会(老年人口割合が7%)から高齢社会(老年人口割合14%)となるまでの経過時間を国際比較すると、欧州各国で4~60年かかっているところを、タイではわずか20年程度で移行したという報告がなされている。
私たちはよく「貧乏子だくさん」なんていったりして途上国では、特に農村では子どもが多いイメージがあるが、必ずしもそうではないということだ。特に、GDPが著しく低い農村部において高齢化現象は起きているというのである。

それは、農村から都市へとくに、若い人口が流れているからだ。情報・交通機関が発達したことで、都市への人口流出のスピードは速くなり、その結果、
○農村部:reproductive ageにいる人が少ない
○都市部:高学歴化、晩婚化などで低出生率
という状況になるにいたり、高齢化はとまらないということだ。どっかの国の「三ちゃん農業」を生み出した状況と一緒といえるかもしれない。
貧しい国であればあるほど、所得格差をうめる唯一の方法は、学歴を高くすることだ。学歴を高くするためにはふるさとをあとにしないといけないのかもしれない。

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まとめ
今回の勉強会は、いわゆる私が普段勉強しているような内容からは程遠かった。しかし、政治・経済という内容自体は普段見ている社会を別の角度から照らし出すもので、単純に面白い。それに、私が今やろうとしている学問領域を社会の中で、きちんと位置づけをする、という点においても非常にためになるだろうな、という感覚はあった。

それからタイのエイズ対策がドラスティックに進んだのは、タイでは、予算権限が省の局レベルにまで降りてきていることが関係するのかもしれない。
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