さつま白波
深夜のドン・キホーテのアルコール売り場をうろうろしていると、見覚えのある焼酎が眼に入った。さつま白波だ。今からちょうど十年前に死んだ祖父が好んでよく飲んでいた。
今から10年前には、私はもう中学生だったので、当然記憶ははっきりしているべきなのだが、どういうわけか、思い出せる記憶は数えるほどしかない。そんな中、鮮明に残っているのが、さつま白波を一升瓶からグラスに注ぎ、キャップをポンッと押して戻す祖父のしぐさだ。芋焼酎が今のようなメジャーなものではなく、むしろ、貧乏人が飲む安い酒だった時から、その酒を祖父は好んで飲んでいた。
あれから十年がたち、みな少なからず変わった。祖父が生きていたら
どう言うだろうと考えることがないわけではない。
せっかく眼に入ったのだから、と思って、さつま白波を購入した。一升瓶を買おうか迷ったが、飲みきれないときのことを考えて、半分のサイズの小さい瓶を買った。24の私にはちょうどいいサイズなのかもしれない。
これからの十年は、もっと変わるだろう。苦しくなるときも、悲しくなるときも、
どうしようもなくなるときもあるだろう。そんなときは、さつま白波に酔いながら、
夢の中の 祖父に語りかける自分がいるのだろう。