ストレス発散のはけ口としての移民


デンマークのとある新聞社がイスラム教の予言者ムハンマドの風刺画を描き、更に、それに呼応して、他のEU諸国でも類似の論説、または記事の転載があった。当然のように、イスラム圏からの反発を招き、大きな問題になっていることは昨今の報道の通りである。

偶像崇拝を特にさけるイスラム文化であるのだから、ムハンマドを肖像画にし、しかも、「バカ」にする内容であれば、このような暴動が起こるのも致し方ない、とも言えるかもしれない。彼らとしては守るべきを守っているのであろう。

一方の欧州。
長年続く不況状況により欧州各国では社会に対して不満は募っている。不況で厳しい雇用市場をより厳しいものにしている(と彼らが考えている)のがイスラム圏からの労働の流入。
その上、アルカイーダなどのイスラム出身のテロリストグループの存在により、欧州には慢性的にムスリムに対して倦厭的な感情があるという。

移民に対しては、このようなネガティブな感情が存在することは、そんなに珍しいことではない。移民の持つ身体的な差異が明確に、「わたしたち」と「彼ら」とをわけ、意識化されやすい。

オーストラリアでは先月、多数いるレバノン系移民に対する暴動が起こった。これも失業率が高いオーストラリアでの社会不安を、レバノン移民に向けたものである。社会不安が存在するとき、人々はそのストレスや不安のはけ口として、その社会の中のマイノリティをたたくのだろうか。あたかも、その行為をすることで、社会としての一体感を感じるように、だ。マイノリティをたたくこと際に得られる一種の高揚感をもってして、漠然とした不安から逃れようとしているのではないか、とすら疑ってしまう。時代は少し遡るが、関東大震災の後にたくさんの朝鮮半島出身者が殺害されたことも同様かもしれない。

小さなコミュニティで暮らしていた「あのころ」は、少数の集団は力がないマイノリティであった。ところが、グローバル化が進む現在においては、人数がすくないといっても、「マイノリティ」が、巨大な勢力であることはしばしばあるのである。時として、(予想外にも、)今回のように大きな反発をうけることがある。

今回の一件がこれからどのような方向に向かっていくかは、分からないが、事態は相当深刻かもしれない。このような事態を再び引き起こさないために、そして、平和で安全な世界を築くために、より一層の異文化理解が必要となる。

グローバル化のポジティブな面に期待したい。

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<ムハンマド風刺画>抗議デモで、ノルウェー大使館に放火
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 【カイロ支局】欧州の新聞がイスラム教の預言者ムハンマド(マホメット)の風刺漫画を相次いで掲載し同教徒が反発を強める中、シリア・ダマスカスで4日、数千人規模の抗議デモがあり、「デンマークでコーランを燃やす集会がある」とのデマ情報に扇動された参加者が同国大使館などのあるビル(4階建て)や近くのノルウェー大使館に放火した。いずれも大使館関係者に被害はなかったが、建物は大きな被害を受けた。また、レバノンのベイルートでは5日、デモ隊がデンマーク総領事館に放火した。治安当局は催涙ガス弾でデモ隊を解散させようとしたが、衝突でけが人が出ている模様だ。
 ◇参加者がデマ情報に扇動され…シリア・ダマスカス
 デンマーク、ノルウェー政府は4日、シリア国内の同国民に退避勧告を出し、シリア政府に抗議した。ノルウェー政府によると、シリア側は謝罪したという。また、EU(欧州連合)議長国のオーストリアは4日、「欧州の市民や財産への脅威であり容認できない」と暴力的な抗議活動を非難した。
 デンマークの新聞が昨年9月に風刺漫画を掲載し、欧州各紙が相次いで転載したことが発端となり、ダマスカスでは先週以降、デンマーク大使館前で連日、座り込みデモが行われていた。
 AFP通信によると、この日、一部のデモ参加者の携帯メールに「コペンハーゲンでコーランを燃やす集会がある」との情報があり、興奮した参加者たちが警官隊の警備を突破し、ビル入り口付近で家具を燃やして放火し、投石を繰り返した。実際には集会は行われておらず、情報はデマだったとみられる。
 デンマーク大使館はビル3階に入っており、同じビルにはチリ、スウェーデン両大使館も入居していた。この日、ビルは休館で各大使館の職員の大半も休んでいた。
 デモの参加者らはその後、約1キロ離れたノルウェー大使館に移り、警官隊を突破して建物に侵入して放火した。さらに近くのフランス大使館へも移動したが、警官隊が催涙ガスなどで鎮圧した。

(毎日新聞) – 2月5日20時20分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060205-00000049-mai-int


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