20歳のときに知っておきたかったこと 書評


研究者になろうとしている私が起業家から学べること

 この本は私が推薦したのだが、残念ながら読書会のメンバーにはあまりウケが良くなかった。自己啓発系のビジネス書には、成功者が極めて属人的な習慣をあげつらう「合格体験記」型の本が多いのだが、本書にはそういった部分がほとんどないので、研究者である読書会メンバーにも刺さると思ったのだが…。ことによると、ビジネス書全体にアレルギーがあるのかもしれない。
 私だって「どこどこのメーカーの文房具を使うと良い」とか「スケジュール管理はこうするべき!」など、個々人が試行錯誤しなければ意味がない内容を喧伝するビジネス雑誌や「年収10倍になるためには…」などと起こりもしないことを言うビジネス評論家の虚言には意味がないと思う。でもこの本に書かれているのは、そういったもののだいぶ上流にある「心構え」や「ものの見方」についてで、より多くの人の人生に適用可能だと思う。読みやすい文体とわかりやすい具体例は、読むスピードを早くさせた。

 私がこの本から学んだことはたくさんあったのだけど、以下によくまとまっているので、そのまま引用したい。

問題を解決するには、さまざまなものが必要です。鋭い観察力、しっかりしたチームワーク、計画を計画で終わらせない実行力、失敗から学ぼうとする前向きな心、そして独創的な解決策。でも、まず必要なのは、問題はかならず解決できる、という気概を持つことです。

 
実は、研究者として自分がうまくやっていくためには、こうしたビジネス書に書かれている内容が役に立つと以前から思ってきた。それは、研究だってビジネスだって、商品開発(=研究のアイディアの発想)して、製品の生産(=調査や実験)をして、世の中に売り出す作業(=論文投稿、学会発表)をする、という意味では同じで、仕事に対するあり方にそんなに大きな違いは存在し得ないと思っているからだ。また同時に、「専門家」とか「学者」が持つマイナスのイメージ――ひとつのことにしか興味を持たない“世間知らず”――に対する一種の恐怖感があって、成長を礼賛する書籍に魅力を見出してきた。そして、それは今もそうなのだと思う。

 学部4年生のころ、悪い友人が立ち上げた怪しいベンチャー企業でいろいろな仕事を手伝わされた。仕事をしていてその友人のことをすごいなと思ったことが何度かあった。たとえば、私が習いたてのFLASHで作ったソフトを100万円で企業に売りつけてきたことや、どこかの社長に話をつけてオフィススペースを無料で借りてきたことだ。自分が生きてきた中で学んだ常識とはまったくかけ離れたロジックで彼は動いていた。「成功」するまで手を変え品を変え行動し続けるし、失敗してもへこたれるわけでもまったくない。多少のペテンはしたもの勝ちという姿勢に、(彼は間違っていることも多いのだが、それ以上に、)私自身の弱さを認識させられた。既存のルールの中では上手に生きてきた私だったけれども、新しい世界を作り出す能力にまったく欠けていたことを認めざるを得なかったのだ。「もともと特別なオンリーワン」だとか、「結果よりもプロセスが大事」だとか、そういった居心地のいい言葉は、自分の情けなさをぼやかすだけの言葉だと思うようになった。
 
 世の中が変化に乏しい時代ならいざ知らず、これだけ大きく動いている時代に、既存のルールの中で上手に生きていても仕方ない。ルールごと暗闇に放り込まれるだけだ。民主党の事業仕分けにゆれる研究環境も同じで、たくましく生きていかないといけなくなってしまったのだと思う。
 筆者は「問題と格闘した経験があれば必ず解決策が見つかると思えるようになる」と書いている。私にとって学部4年生のときの日々が、まさにはじめて「問題と格闘した日々」で、そのあといくつかの学生団体などに関わったときに、「どこか」まで行けば必ずゴールにたどり着くのだという実感は、とてもよく役に立った。そしてこれからの研究者人生にもきっと役に立つのだと思う。

■メモ
・元手がないのは言い訳にならない(p.18)
・T字型の人材(p.19)
・社会に出たら、有能な教師が道を示してくれるわけではないのだから、君たちはできの悪い教師の授業を取りなさい(p.22)
・問題を明確に定義できれば、その解決策はおのずから明らかになる(p.32)
・できないことなんてない、ということがわかりました(p.44)
・私が教えられたのは三つだけだ(p.64)
・並外れた業績を達成した人々の最大の味方は、ほかの人たちの怠慢である(p.83)
・成功者の多くは、失敗の経験がない人について、十分なリスクをとっていないからだと考えているのです。(p.88)
・リスクは5種類(p.114)
・自分のキャリアはフロントガラスではなくバックミラーで見ると辻褄が合っている(p.131)
・外国人旅行者の目になることが必要(p.148)
・これ試験に出ますか?(p.188)
・不確実性こそが(p.214)

・「ベスト」と「ワースト」(p.50)
個人的な反省を述べると、読書会で取り上げた本がつまらない本だと、つい批判的な内容しか思いつかないけれども、きっとどのような本にも学ぶ側の姿勢されあれば何かしら学ぶことがある。トレーニングだと思ってこれからはつまらない本にも何かしらの意味を見出すように努力したい。


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