白浜フィールドワーク


 7月10日、東京駅から館山までなのはな5号で、さらに館山から白浜まではレンタカーで移動した。ドライブは爽快で、車中の雰囲気は天気同様明るかった。(トヨタハイエースのサスペンションの悪さと座席スペースの狭さには閉口したが…。)
 
 さて11時ごろに今回の宿舎である吾荘に到着し荷物を置いたら、さっそくフィールドワークへ。「何でもいいから面白いことを発見してくる」という、人類生態らしいフィールドワーク(苦笑) グループは、ニューギニア班と中国班、そして学生班(3人)の三つになった。ということで、卯田さんと私のふたりで一緒にフィールドワークを実施することに。
 
 はじめにテングサを加工しているおばあさん3人に話しを聞いた。(そのあと、彼女たちが昼寝している脇で僕らは弁当を食べさせてもらった。ありがとうございました!) そこからまた東に向かって歩き出し、行きかう車のナンバーを見てどこから来ているか確認。さらに塩浦でヒラメ漁の網をばらしている人と少し話した。最後は、卯田さんが2000年ごろに調査をした海女さんの家を訪問し、現在の様子をいろいろと伺った。そのおうちではとうもろこしを大量に茹でてもらった(すごくフレッシュでおいしかったです、ご馳走様でした!)。結局、3時半ごろまでずっと歩き回り、宿まで歩いて戻る途中で買出しに向かう梅崎さんたちの車に拾ってもらった。
 
 宿に戻ってしばらくして海士さん(海女さんの男性バージョン)のお話しを一時間半近く伺う。お話しをしてくださった海士さん、アレンジしてくださった吾荘のご主人、ありがとうございました。途中で遅れてきた学生さんと小谷さんが合流し、夕食、成果報告会となった。小谷さんにはレクチャーもしていただいた。

周辺地図


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 以下、フィールドワークでの発見など。

テングサ
 テングサは真水で洗い天日で干すことを繰り返すときれいな黄色になる。乾燥させたものを煮るとトコロテンだ。手ぬぐいの布でこして作るという。ここではひとつ30キロの塊にして埼玉の問屋に卸しているという。5月1日から9月10日まで、テングサの禁漁が解かれるという。
 良質のものは上テン、花が咲いてしまっているのは青テン、ペッタンコになってしまっているものをドラグサ、ところてんを作るときに一緒に煮るとコクが出るのはオニグサ。青テンは干しても黄色くならなので、上テンからより分ける作業が必要で、おばあさんたちはその作業をずっとしていた。青テンになるのは、石油とかママレモン(合成洗剤)、トイレの排水なんかのせいではないかと考えていた。ちなみにドラグサは昔からあったそうで、テングサをほっておくと根がだめになってそうなってしまうのではないかと推測しているそうだ。
 おばあさんたちは、みなさん70歳前後だった。以前はオカバイ(海岸のそばで海藻/海草などをとること。)をしたそうで、子どものころはそれが結構いい小遣い稼ぎになったそうだ。歩戻しといって、漁協が問屋に良い値で売ったときには追加で支払いをしてくれることもあったという。ただ今では期待できないそうだ。
 最近は朝鮮半島からテングサを買い付けに来る人が多くて、海女から直接キロ1,000円で買い取ったりするそうだ。おばあさんたちのところではキロ525円で買い取るので、向こうに流れてしまうこともあるそう。誰かが向こうに売ったりすれば、なんとなくわかるのだが、いろいろな言い逃れの方法ができてしまっていて、どうしても防げないという(たとえば、自分のところの子どもに食べさせた、など)。向こうはまったく処理をしないでそのまま買い取っていくらしいが、おばあさんたちは「私たちは漁協の看板を背負っているからいい加減なことはできない」といって、きちんとドラグサや青テンを選り分けていた。
 ちなみに、テングサを取るときは1,000円、アワビを取るときは10,000円漁協に払うという。ちなみにテングサでも水中メガネを使用する場合は10,000円支払わなくてはならないという。(以上、テングサのおばあさん)

高価なアワビ ~海にお金が落ちている~
 アワビは、オリンピックの時にはキロ1万円。今年は春先はいまいちだったが、上海万博の影響か、現在は良くなってきていてキロ7500円程度らしい。ちなみに日本のバブルのときはそんなでもなかったらしい。
 アワビは養殖していて親指大のものを海に放すそう。そうすることで安定供給につながるとのこと。また禁漁区を設け、年に2,3回だけその場で漁を行ったりする。そうした場所だと3人、2時間で190キロ揚げたこともあるという。(以上、塩浦のおじさんたち)
 今はアワビを取るのに厳しいルールがある。外部からの監視人がいて12センチ以下のアワビを持ち帰れないようになっている。昔は小さなアワビを旅館に横流ししていたりしたが、今はそういうことはできない。旅館も以前は宿泊客にだすアワビを確保したかったが、宿泊客も減少し、そうしたニーズすらなくなったとのこと。(アワビは小さいほうがやわらかくておいしいらしい。(食べてみたいー。))
 昔は本当にいい儲けだった。ラーメン一杯80円の時代に友達と二人で10,000円稼いだこともある。そのまま海士をやっても良かったが東京に7,8年いて世の中を見た。(海士さん)
 採補証発行の際にはルールを守りますよという誓約書を提出する。ちなみに誓約書を破れば、罰金200万円、懲役3年程度の実刑となる法的対応をするらしい。組合員は組合を除名になる。(街にあった掲示板)

海女と健康
 昔はウェットスーツがなかったので、皮下脂肪の多い女性が有利だったが、今はウェットスーツがあるので、息の長い、力の強い男性が有利になった。(海士さん)
 ちなみにウェットスーツの着用に関しては、白浜町の中でも、東側の白浜と西側の長尾ではルールが異なる。長尾ではウェットスーツの使用を決めたのに対し、白浜はなかなか話がまとまらす、いまだウェットスーツの着用は認められていないという。胸からおなかのところにかけて覆うものを着用しているとのこと。ただし長尾は2時までしか漁をできないのに対し、白浜では3時半まで漁を行うことが認められているそうだ。(テングサのおばあさん)
 もぐったあとは暖をしっかり取ることが重要。17-18度で2時間も入っていると、体の中心まで冷えてしまう。しっかりと火に当たって体を温めることが重要。この方法は中途半端な風邪にも対応できる。(海士さん)
 一番大きいのは中耳炎。中耳炎になってしまうともうだめ。壊してしまって潜らなくなる人も。でも、まったく関係ない人もいて、そういう人は大海女。(テングサのおばあさん)
 昔はよくかんだあとのガムを耳栓にした。しかしガムが溶けて鼓膜にくっつくこともあった。(海士さん)
 生命保険を年間80万円くらいかけていたこともある。(海士さん)
 あま連総会では健康のチェックリストを作成している。(掲示板)

タヌキとの戦争
 おばあさんたちは畑もやっていて、朝四時に畑を見に行くそうだ。というのも、最近はタヌキがとうもろこしをよく食べに来るから。生でもおいしいとうもろこしだそうで(茹でたらもっとおいしい)、なんと一晩で30本も食べられてしまったこともあるそう。暴風網とえび網、さらにビールの空き缶やギンギラギンのテープ、電気柵などで対応。ただしタヌキは網の下の土を掘って入ってくることもあるそうなので、だめになった草刈機の刃を網の下に差し込んでタヌキが入れないようにしているらしい。今のところ効果はあるそうだ。(テングサのおばあさん)

海女の人生訓(海士さん)
 深い、怖いと思ったら、自分の体にブレーキをかけてしまうので、雲などを見て心を無にする。あまり力を入れないでもぐって、あがってくるときも海の底を軽くけって、足ひれをちょっと動かすだけであがってくる。
 30秒くらいしか潜らない。余裕をもてば、ピンチがあっても対応することが可能。
 攻めきれない岩。

その他のメモ
 7月1日からは天候不順でもぐっていない。天気がはれていても、大雨のあとだと川の水が海に流れ込んで、水がにごってしまうらしい。
 一時間半で100回もぐり、3回に一回くらいアワビが取れる。
 メガネの曇り止め。昔はよもぎとか使っていたけど、海士さんの場合は歯磨き粉。(海士さん)
 白浜の山にマテバシイが植えてあるのは、江戸末期から明治にかけて木更津あたりで行われていたのりの養殖に使われていたのがはじまり。
 精進ガニのことをイソッピと言うらしい。砂浜をちょろちょろ動く姿が子どものちょろちょろした様子にもつながるので、子どものこともイソッピということがある。
 白浜には南紀白浜からの移民が多い。しょうゆ文化、熊野神社、捕鯨、鈴木姓などがこちらに一緒にやってきた。


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