ストレスチェックのデータを使ってうつ症状をアウトカムにした論文を書くために必要そうな情報のリスト


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ストレスチェックとは

職場のメンタルヘルス対策の一環として事業者が1年に1回実施することが義務付けられている検査です(従業員の義務ではない)。

「ストレスチェック」とは、ストレスに関する質問票(選択回答)に労働者が記入し、それを集計・分析することで、自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べる簡単な検査です。
「労働安全衛生法」という法律が改正されて、労働者が 50 人以上いる事業所では、2015 年 12 月から、毎年1回、この検査を全ての労働者に対して実施することが義務付けられました。
-引用:厚生労働省 ストレスチェック制度簡単導入マニュアル

うつ症状のカットオフ値

ストレスチェックは、うつ病などのメンタルヘルスの不調がある社員・職員を特定することを目的とはしていません。そのこともあってか、ストレスチェックのデータを使ってうつ症状を定義するような研究が全然見つかりません。しかしながら、ストレスチェックの質問項目の下位項目には「抑うつ感」があり、以下の6つの質問が使われています。これを使って学術研究をすることは十分可能だと思います。

最近一か月間のあなたの状態についてうかがいます。最もあてはまるものに〇を付けて下さい。(1=ほとんどなかった。2=ときどきあった。3=しばしばあった。4=ほとんどいつもあった。)

13.ゆううつだ
14.何をするのも面倒だ
15.物事に集中できない
16.気分が晴れない
17.仕事が手につかない
18.悲しいと感じる

それぞれの質問の回答(4件法)に1~4点を付しているので、抑うつ感で6~24点のレンジになります(得点が高いほど抑うつ感が強い)。クロンバックα係数は0.86とのこと(労働省 平成11年研究報告書)。

「抑うつ感あり」を定義するカットオフ値については、16点、17点、18点を使用している報告書がそれぞれありますが、他のうつ尺度ときちんとした形で比較したような先行研究は今のところ見つかっていません(引き続き捜索中)。ストレスチェックで高ストレス群を定義する際に抑うつ感の得点17点以上を「抑うつ感が多い/高い」としていますので、17点というのは一つの目安になるかもしれません(厚生労働省「数値基準に基づいて「高ストレス者」を選定する方法」(p.5))。

なお、こちらの「平成22年度厚生労働科学研究費補助金こころの健康科学研究事業 分担研究書」には、職業性ストレス簡易調査票のうつ病尺度として心理的ストレス反応の尺度(17 項目)のうちの6項目が選ばれていること、男性では17点、女性では18点以上が「高ストレス」と判定されることが記載されていますが、引用文献の記載はありません。また、労働安全衛生総合研究所の報告書では、平成11年度「作業関連疾患の予防に関する研究-労働の場におけるストレス及びその健康影響に関する研究報告書」において、抑うつ感(6問)の合計点が16点以上をストレスが「多い/高い」状態に該当するとしていると記載しています。

英語版ストレスチェック

厚生労働省静岡労働局のページに英語版のストレスチェックがあります。こちらの訳文を参照しながら、論文内に具体的な質問項目を記載するといいかと思います。なお、ポルトガル語版、中国語版、ベトナム語版も見ることができます(ブラジル人、中国人、ベトナム人も日本でたくさん働いていることを意味するのですね)。

参考になる資料

コメント・メモ

  • 今後もメモを足していこうと思います。かなり多くのデータがあるはずなのだけど、ストレスチェックをつかってdepressive symptomsを定義した論文が全然見つからないというのはかなり不思議な話・・・。いったいなぜなのだろうか?(2020/08/09)


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