生命をつなぐ進化のふしぎ―生物人類学への招待

生命をつなぐ進化のふしぎ―生物人類学への招待書評
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あらゆる段階における「いのちの姿」を、最新の研究動向に触れながら説明したのが本書である。著者の幅広い関心を反映して、ネズミから人間まで、生理学的なメカニズムから神話に至るまでと幅広く触れられている。

「過度になにかしらのメッセージを伝えようとするのではなく、「事実」に忠実に淡々と書いている」という印象を受けた。良い意味で「サービス精神がない」。もちろん、より幅広い読者に興味を持ってもらうようなテーマ設定をしてはいると思う。しかし、読者のレベルに合わせて、事実をデフォルメするのではなく、そのままの形でなるべく筆を進めようとしている。その姿勢には、「新書」という媒体を使う際にも、研究者としての基本スタンスを崩さない、という彼女の決意のようなものを感じる。

あらゆる現象について明快な合目的的で必然的な説明を好む傾向、あるいは偶然という説明に驚きむしろ惹かれる人がいるのはどうしてだろう。(中略)分からない現象に対する明快な、例外のない説明は安心を与えてくれる。(p.21)

サイードのオリエンタリズムではないけれども、人は「未知との遭遇」に際し、分かりやすさを求めたり、逆に、その神秘性に魅せられたりする。人がそういった反応をすること自体が興味深いとは思うけれども、それ以上に感じることは、価値観が多様化し、何が正しいか良く分からないこの世の中では、「ワカリニクイコト」をそのまま受け入れ、向かい合い続けることの必要性は高まっているということ。そういう点で、事実に忠実に「いる」という研究者の姿に、なにか力強さを感じた。

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