生き物をめぐる4つの「なぜ」 書評


生き物をめぐる4つの「なぜ」を読んで
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4つのなぜとは?
オランダの動物行動学者ニコ・ティンバーゲンが、生物現象を説明するときに利用した着眼点が、本書のタイトル「生き物をめぐる4つの「なぜ」」である。

ティンバーゲンの分類と筆者のそれとは多少異なるようなので、ここに明記しておきたい。ティンバーゲンはまず、大分類として、Ultimate explanationsとProximate explanationsのふたつに分類する。そして、その下位分類としてそれぞれ、Function (adaptation)機能(適応)、Phylogeny (evolution)系統発生とCausation(直接的な原因)、Development発達(個体発生)を置く。

1. Ultimate explanations
  A)Function (adaptation) 機能(適応)
  B)Phylogeny (evolution) 系統発生
2. Proximate explanations
  A)Causation 直接的な原因
  B)Development 発達(個体発生)

筆者の分類では、上からそれぞれ、究極要因、系統進化要因、至近要因、発達要因となっている。分類の枠自体は一緒なのだが、わざわざ変えなくてもいいのにとは思う。ちなみに、究極という言葉はultimateと語感が違うような気がする。(とはいっても何か他のものがあるかというとそういうわけではない気がするのだが・・・。)

感想
 丁寧な書き方をしているので読みやすいことは読みやすい。しかし、平易な噛み砕いた書き方をしつつも、突然専門単語を羅列したりしているのが解せなかった。ターゲットとして誰を想定しているのかよく分からないという点では△なのかもしれない。完全に噛み砕けば、中学生や高校生にも楽しんでもらえるのではないか。
 
補足
・私がこれまでに聴いた鳥のさえずりの中で最も美しかったのは、東アフリカに分布するマミジロツグミヒタキという鳥でした。(p.53)


さえずりはなかなか見つからず。引き続き探していつか是非聞きたい。鳥のさえずりはいろいろと美しいものがあるようだ。

・いくつかの理論はそれぞれの興味深かった。
p.65 ハンディキャップの原理
p.67 ランナウェイ淘汰
p.208 しっぺ返し戦略

・もしも遺伝的に備わっているものならば、生まれた子どもの渡りのパターンは、両親の中間的なものになるはずです。さて、ドイツの学者たちがドイツ在住のズグロムシクイとカナリア初頭在住のズグロムシクイとをかけあわせたところ、生まれた子どもは、ちょうど両親の中間の時期に中間の長さだけ渡りの衝動を見せたのでした。(p.85)
渡りの衝動とは一体なんであるのか? やっばい凄く渡りたくなってきた・・・とかあるのだろうか。

・鳥たちはまた地磁気を感知して、(p.88)
どこでどう感知するのであろうか。果たして地磁気を感じていると鳥たちは意識しているのだろうか。それとも勝手に導かれるのだろうか。もし無意識のうちに、ということであれば、人間でも同様のことがある(あった)かもしれない。

・最終章の「人間の道徳性」に関しては、少し期待はずれであった。それまでの章のような分析がされてあると思って読み始めたので、抽象的な話が多すぎて少し期待はずれだった。

・中学入試の国語の問題で、こういう文章はよく使われる。


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