「5歳児」に向けて授業する気持ちを忘れるな


学部生向けの授業

 今日は学科の学部生向けに、人類生態学の授業を0.5コマだけ授業してきた。去年は人がいなくて自分で1コマ授業をしたのだが、今年は1日(2コマ分)を助教+特任助教の4人で手分けして行った。50分の授業なので準備自体はそれほど大変ではないが、なんだか話したりないような気も、話させたりない気もする(もちろん分量を欲張りすぎた自分がいけないのだが・・・)。
 さて、今年のテーマは「ライフスタイルの近代化と健康転換」である。健康転換とは、近代化以降の経済発展に伴い、医学・公衆衛生学の進展、人々の行動様式(健康行動・食生活)の変容、教育水準の向上など様々な健康の決定要因が変容することで、疾病構造が急性の感染症を中心にしたものから慢性疾患を中心としたものに変容する一連のプロセスのことをいう。地球上のすべての人口集団がこのプロセスの中で寿命の延長を経験している。下に紹介する書籍に詳細な内容が書かれている(授業のネタ本)。
 ライリーの6分類(「公衆衛生」「医療・医学」「経済発展」「栄養」「行動様式」「教育」)というものがあって、それらが寿命を延長したと整理されているのだが、基本的にはSocial Determinants of Healthと同じ内容である。健康転換はもう少し近代化・経済発展というコンテクストに寄せて健康の決定要因を整理していると考えて差し支えないと思う。

授業の構成

 今日の授業は、「1.健康転換とは何か?」「2.中国海南島での研究」の二本立てで行った。特に最初の「1.健康転換とは何か?」は授業の冒頭にグループに分けて3つの課題(1740年代のフランス女性の平均寿命は何歳か?/1740年と現代の生存曲線を書きなさい/寿命延長に貢献した要因は何か?)についてまずディスカッションしてもらい、それを解説する形をとりながら(学生の発表にコメントを入れながら)授業を進めた。
 オハイオ州立大学の受け入れを先月したときに、Lecture styleは一番知識を伝達するうえでは効率が悪いとされていると向こうの先生に聞いた。なので今回はなるべくLecture styleから離れようとしたわけである。授業の大半は、グループディスカッションの時間と学生への質問をする時間にあてた。
 結果は、うまくいったように思う。少なくとも寝ている学生はいなかったし、みんなきちんと応答してくれた。オハイオの学生への授業中でのコミュニケーションを見た時に、ヤンチャ高校の生徒向けの授業なのではないかと思うほど平易な言葉遣いをするなという印象を受けた。なんなら馬鹿にしているような感じすら受けて、本当にそれでいいのかなと訝しく思わないわけでもなかった。ただ今日、自分で「簡単」な授業をしてみて、そのくらいしてようやく学生に伝えたいことが伝わり、学生も学生なりの意見を言ってくれるようになるのだなと、身をもって感じた。
 大学受験の時の塾の先生には、「英作文を書くときは5歳児に向けて話すように文章を書きなさい」ってよく言われていたけど、これは本当に箴言だと改めて思う。難解な内容を紹介しようといったって、なかなか話せるものではないし、万が一話せたとしても学生に伝わらない。知識がきちんと伝達されなければ、それは授業の目的を果たしたことにはならないわけで・・・。


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