[書評] 中国メディアの現場は何を伝えようとしているか


中国国営放送の女性ニュースキャスターが執筆した取材記。中国では敏感だろうと思っていたトピック(民主化、環境問題、日中歴史問題、土地接収のはなしなど)まで立ち入って書いている。ことによると検閲済みなのかもしれないけど、ジャーナリストとして「攻めている」感じがある。かなり臨場感をもってして書いているので、読みながら自分の心臓の鼓動が早くなるのを感じた(特に第一章のSARSの取材記。)さすがはアマゾン中国で2013年年間売り上げ1位。

それにしても、この本はメディアリタラシーのいい教材だと思う。自由な報道がなされない(と思われている)環境で、こういうキャスターが、そしてこういう本が生まれるというのはとても皮肉だ。

少し残念なのはちょっとつながりが悪い箇所が見られたところ。不自然な改行とか。日本語訳を作る時に短く編集した際にうまくいかなかった部分なのだろうか。あと冒頭のインタビューで訳者が著者から共産党の圧力を受けたという言葉を何度も引き出そうとするのだけど、そういう固定的なイメージで見ることの危険性をうたっている本の趣旨からは少しずれちゃう。もっとも著者がとても分別のある人に映るから結果としては良いのかもしれない。

p24 中央テレビ局でも現在は視聴率への要求が厳しくなっています。視聴率の審査があり、基準に達しないといけません。
p28 貧弱な既成のモデルを破らないといけないと思います。私たちは外国人に対して往々にしてエキゾチシズムを感じます。ドラマチックで、現実離れれしているほど良いと思ったりします。
p74 すがるように趙を見ると、彼は言った。「弱者を取材したいのなら、弱者が君に同情するようにさせなくちゃ」。
p81 同性愛者はこの国では身分を隠している。三千万人近くいるというのに、これまで中央テレビにその姿を現したことはなかった。
p159 これらの写真を掲載した雑誌『読庫』の編集長は、写真を選んだ理由について語った。「あらかじめテーマを設定して創作を行うというのは、恐ろしい習慣です。ほとんどの人が弱者を撮る場合、高尚なものに撮ろうとするか、見る人の同情を買おうとします。」
p188 こうした科学的精神の欠如は、老大なる帝国全体に浸透している。
p199 土台の固まってない報道を基礎にしたら、評論など砂上の楼閣にすぎないということだ。
p240 過去十一年において、中国の耕地総面積は一・二五億亩〔約八百三十万ヘクタール〕減少した。(略)多くの地方政府で、土地が予算外収入の六十パーセントを占めている。