マルチレベル分析(5)


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 2本ともマルチレベル分析に関するレビュー論文。出版年は2000年と2001年。論文のメッセージは、「どうしてマルチレベル分析を使わないといけないのか?」「ほかの分析とどう違うのか?」といった基本的なものではあるが、先行研究に当たりながらマルチレベルモデルの適用方法について解説してあり、有用だと判断し採用。
 以前の記事『マルチレベル分析(4)』で紹介した論文よりかは若干難しい印象があるが、数式はほとんど含まれておらず、マルチレベル分析関連の資料としては読み易い方だろう。

 この2本の論文を読むときに注意したいのは、Multilevel Modelが必ずしもRandom effects modelを意味していないということだ。おそらく、これはこのふたつの論文が書かれた2000年のころの言葉の使い方の問題で、現在Multilevel ModelといえばRandom effects modelのことを指す(はずである)。

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(1) Multilevel analyses of neighbourhood socioeconomic context and health outcomes: a critical review.
   Journal of Epidemiology and Community Health. 2001; 55: pp.111-122.
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◎目次

Introduction
・Winkelsteinの指摘:生態学的な要因が、集団の健康状態や疾病を大きく決定する要因である可能性がある。
・それでも着目されてこなかったのは、(1)intractability of ecological fallacyと(2)専門家がindividual risk factorsに
 焦点を当ててきたから。
・現在では集団レベルの影響が個人の健康に与える影響の大きさを測るうえで適切なツールとして
 受け入れられている。
・コミュニティ効果(Neighbourhood Effect)に関する妥当性と一般化可能性は検討されていない。

Method
・対象とするのは、先進国のみ。

Methodological issues in studying neighbourhood social factors
  Defining and measuring “neighbourhood”
   ・適切な”Neighbourhood”とは何であるのか?
  Choice of area level social variables
   ・どのようにして集団属性を取得するか?
     (1)Derived:参加者のデータを集計する。
     (2)Integral:集団に固有のデータ。
  Controlling for individual level socioeconomic status
  Controlling potential confounding factors
   ・変数間の関係を概念化し、因果関係について一定の仮説をおいたうえで、マルチレベルを適用する。
  Choice of analytical model
   ・本研究でレビューしたすべての研究でRandom effects modelを用いているわけではない。

Results
  Mortality Studies
   ・レビューした先行研究では、Neighbourhood effectsはmodestながらも統計学的有意な結果。
   ・RR less than 2.0
  Morbidity Studies
  Chronic disease among adults
  Studies of mental health
   ・「コミュニティ数として22は少ない」という記述。
   ・他の研究を見てみると5000とか。
  Studies of health behaviour
   ・貧しいエリアでの喫煙が多い
   ・家庭内暴力は、高失業エリアでRR=3.42、定収入エリアでRR=4.4

Discussion
・個人レベルでの調整が十分でないと、それがコミュニティレベルの結果として出てきてしまう。
・個人レベルのSESを評価するために複数の尺度を用いると、コミュニティレベルのSESと健康の影響が
 見えにくくなる傾向。

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(2) Multilevel Analysis in Public Health Research.
   Annual Review of Public Health. 2000; 21: pp.171-192
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◎目次

Introduction
・interest in the potential ecological-, macro-, or group-level determinants of health

Rationale for the use of multilevel analysis
・マルチレベル分析の考え方:個人はその社会的コンテクストに影響を受ける
 ⇔個人主義 Individualism:
   (1)個人レベルの説明変数が、個人レベルの結果変数をもっともよく説明する。
   (2)集団というのは個人の集まりにすぎない。そこの含まれる個人へ影響をもたらさない。

The multilevel method and its differences with other approaches
・層化されたデータの扱い方。
 (1)グループの存在を無視し分析。
 (2)グループごとにデータを集計し説明変数とする。
 (3)グループごとにバラバラに検討する。
 (4)ダミー変数としてグループを入れる。
 (5)マルチレベルを利用する。

The statistical model
・切片と傾きの共分散が正:傾きが大きくなると切片が大きくなる。
・回帰分析の前提のうち、マルチレベル分析では以下の2つが満たされない。
  1.誤差項は互いに独立で同一の分布に従う。異なった誤差項は無相関。(分散均一性 homoskedasticity)
   グループごとにU0jやU1jが存在し独立ではない。
  2・分散が一定(σ2)
   U0jやU1jに加え、Iijが一定ではない。
・マルチレベルモデルでできること
  1.ContextとCompositionの弁別。
  2.個人レベルの変数の影響がグループごとに異なるか?
  3.異なるレベルでのVariationを数値化

Alternatives to multilevel models

Random Effect Model Marginal Model
変量効果によりかわる従属変数。
Unit-specific
集団ごとに従属変数のMarginal Expectationをもとめる。
Population-average

Other application of multilevel model

Examples of empirical application in public health involving individuals nested within groups or contexts
・変数を加え、τ00の変化を見ることで、
 コミュニティ間のVariabilityがどの程度その変数によって説明されるかが分かる。
 τ00が小さくなったら、加えた属性によって結果変数のバリエーションが説明されたと考える。

Challenges to Multilevel analysis
  Multilevel Theories of disease causation
   コミュニティの設定はきちんとした仮説に基づいて行う必要。
  Groups and Group properties
  Separating out independent effects
   グループレベルと個人レベルの要因が相互作用するような場合は扱えない。
  Model complexity
   検定力に関する引用あり。